開成町でつくるなら、
誠実なものをつくりたかった。
藤原さん夫婦が東京から移り住んだのは、神奈川県西部にある
開成町だった。富士山を望み、酒匂川が流れる。
利便性だけを考えれば、東京の方が暮らしやすかったのかもしれ
ない。
それでも二人は、この町に降り立ったとき、直感的に「ここがい
い」と感じた。
藤原さんはWEBコンサルタント。悠さんはプログラマー。
二人とも長く、デジタルの世界でものづくりをしてきた。
移住後、藤原さんは町のために、自分の経験を生かしたいと考えた。
地域のIT支援にも取り組んだが、思うようにはいかなかった。
そんな中、都内から遊びに来た友人たちが、帰りに小田原で土産を買っていく姿を何度も目にした。
開成町に魅力がないわけではない。ただ、その魅力を持ち帰れる形がない。
そこに、藤原さんは町の課題を見つけた。
いつか開成町を訪れた人が手に取り、この町から生まれたものとして持ち帰ってくれる。
そんな商品があれば、町の魅力を外へ運ぶことができる。
そして、つくるなら、自分たちが本当に良いと思えるものでありたいと考えた。
「自分たちが
良いと思えないものを、
マーケティングで
良く見せて売ることは
したくありませんでした。
一からつくるなら、
原料のことも、
つくる人のことも、
買ってくれる人のことも、
自分たちで考えたかったんです」
チョコレートは、カカオからつくられる。当たり前のことだ。
しかし、そのカカオを誰が育て、どのような暮らしをしているのか。
藤原さんは、そこから考え始めた。