チョコレートの原材料といえば、カカオ豆。本やテレビで見たことがある人、最近ではチョコレート売り場やワークショップで実物を触ったことがある人もいるかもしれません。
日本語で「カカオ豆」、英語で「cacao
beans」と呼ばれていますが、豆ではなく、カカオという植物の木に実る、フルーツの中にある種です。
このコラムでは、知っているようで知らないカカオの育つ環境や生態について紹介したいと思います。
カカオが育つ気候条件
さっそくですが、なぜ日本ではカカオを見かけないのでしょうか。
それはカカオの生育環境に理由があります。
カカオが育つのは、平均気温が20度前後、たっぷりの雨が必要で年間降水量1500mm以上の高温多湿の地域。条件に合うのは、西アフリカ、中南米、東南アジアなど、赤道から南北20度の地域に集中しており、この一帯をカカオベルトと呼んでいます。また、最低気温が10度を下回れば枯れてしまうため、一般的に日本の冬に耐えることが難しいのです。
カカオの生産国と言えば、西アフリカのガーナを思い浮かべる人が多いと思います。それもそのはず日本が輸入しているカカオ豆の約80%がガーナ産。(世界一の生産国はガーナの隣国コートジボワールで、ガーナは2位です)カカオの起源である中南米や、台湾、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどの日本からも近いアジアの国々でも栽培されています。
カカオと豊かな生態系
赤道の近くと聞いて、太陽が眩しく照り付ける場所を思い浮かべるかもしれませんが、意外なことにカカオの木(特に芽を出してすぐの幼木や若葉)は強い日差しが苦手です。「暑くないと嫌!でも直射日光は無理!」なのです。そこでカカオは、シェイドツリーとして植えられたバナナやココナッツなどの木漏れ日の中で育てられていることが多いようです。
多様な生きものが暮らす農園は、カカオの受粉を助ける小さな虫にとっても住みやすく、土壌を豊かにする微生物の活動も活発な環境です。農薬や化学肥料に頼らずに生態系の中で育てる、有機栽培やオーガニック、またアグロフォレストリー(森林農法)に取り組むカカオ農園も増えており、人だけでなく、環境にもやさしい農業だと言われています。
カカオの森はどんなところ?
野生のカカオの木は最大で10mほどの高さになりますが、多くの農園では3~4m程に整えられています。また、葉っぱは最大で45cm程(ホオノキくらい!)と大きめ。
そして、枝先だけでなく、幹にもたくさんの花が咲き、実をつける”幹生花(かんせいか)”であることもおもしろい特徴です。幹からピョンと伸びた小さくて白い可憐な花は、まるで妖精のよう。さらに、大きいものではラグビーボールほどの大きさの、赤や黄色に色づいたカカオの果実(カカオポッド)がぶら下がっていて、カカオ農園は不思議な雰囲気です。
日本でカカオに会える場所
生きたカカオに会いたい・カカオの育つ気候を体験してみたい方は、植物園(温室)へおでかけになるのもおすすめです。また、日本でのカカオ栽培には人手や技術、エネルギーを要しますが、沖縄や小笠原、九州等で国産のカカオ栽培の研究が進められており、注目が集まっています。
チョコレートとの良い関係をはじめよう
ほとんどの場合、カカオの育つ場所は海の向こう。だから、どんな環境で、どんな人たちが育てているのか、想像するのはとても難しいです。しかし、遠く離れているからこそ、知ろうとすることに大きな意味があると思います。
チョコレートはあたりまえの存在なのに、カカオの品種や味わい、人とカカオが歩んだ歴史、カカオ産業が抱える貧困や気候変動などの課題、フェアトレードの取り組みなど、知られていないことはたくさんあります。
生きものとしてのカカオを知ることが、チョコレートとの良い関係のはじめの1歩になりますように。
「生きているカカオに会いたい!」と思った人へのインフォメーション(カカオを栽培している植物園 関東)
- 夢の島熱帯植物館(東京都江東区夢の島2-1-2)
- とちぎ花センター(栃木県栃木市岩舟町下津原1612)
- 相模原公園サカタのタネ(古いかも)
- 板橋区立 熱帯環境植物館(東京都板橋区⾼島平8-29-2)
- 八丈植物公園・八丈ビジターセンター(東京都八丈島八丈町大賀郷2843)
- さいたま市園芸植物園(さいたま市緑区大崎3156-1)
- アロハガーデンたてやま(千葉県館山市藤原1497)